「最後にお顔を見てあげてください」ってあれ止めませんか?

私、葬儀に出るのが怖くて仕方が無いんです。
いえ、幽霊とかお化けを信じているとかそういうのじゃなく、葬儀の際に行われる一つの流れが怖くて仕方が無いんです。
それは……ご遺体の顔を見てくださいっていうアレです。

生前の元気な姿で写っている遺影と好対照なあの顔を、何でわざわざ覗き込んで見なきゃいけないんでしょうか。
落ちくぼんだ目の部分、化粧をしているとはいえやはり蒼白な肌の色。
思い出すだけでゾッとします。

で、この前もあったんです。遠縁の叔母の葬儀だったのですが、いつもの流れで「ご遺体のお顔を拝見してあげてください」って。
いやいや、勘弁してくださいよ。ほんとうに、怖いんです、私。
すみません、不謹慎なのかもしれませんが、こればっかりはどうしようもありません。

でも参列者の方って普通に見に行きますよね。
ゾロゾロと並んで、まるで博物館で展示物を見るかのように棺の中を覗きこんで……。
中には「あら綺麗」って言う人までいるんです。
嘘でしょ〜?もう目の前の人、亡くなってるんですよ?
祭壇にある生前の写真を見てくださいよ。笑顔で綺麗に映ってるじゃないですか。綺麗ってああいう表情を言うんですよ。

でも、そんなことを言えるはずもなく、ただひたすらに「誰か自分は見ませんっていう感じで席に残ってくれ!」って思ってます。
でも無理なんですよね。流れ作業のように皆が遺体の顔を見ていくので、小心者の私もそれに抗えず……。

で、見ましたよ。遠縁の叔母の、眠るような遺体の顔を見ましたよ。
まぁ見たって言っても、ほんの一瞬だけですけどね。
パッと見てすぐに逃げます。でも一瞬だけ見ても脳裏に焼き付いちゃうんですよね。遺体の顔。
今も目を閉じれば思い出せちゃいますよ。こういう時だけ発揮される自分の記憶力が恨めしい……!

私はもし自分が死んだとしたら、絶対に顔は見せないでくれって言っておきます。
これといった遺言が思いつかない今、言いたいのはそれだけですね。
もうあの顔を見せる流れ、止めてよ〜!